感動の鮮度を保つ、“永遠の少年“に会ってきました!
インタビュー/画家・長嶋祐成さんの作品展で海歩き
魚譜画家・長嶋祐成さんが描く、愛嬌あふれる魚たちに心惹かれるファンの輪が広がっています。
真夏の日差しをジリジリと肌で感じた2022年7月下旬。
東京・西荻窪のギャラリーHATOBAで、長嶋さんの作品展『bloom(ブルーム)』が開催され(※)、ハンカチを愛用するMONOCO・柿山(代表)、鈴木(取締役)、井上(編集)の3人で会いに行ってきました!
ギャラリーの白壁には、色とりどりの珊瑚、海藻、マングローブの枝といった背景から浮かび上がるように、魚たちがいきいきと泳いでいます。
これまで、魚や水辺の生き物たちの姿のみを描いてきた長嶋さんが、新たに背景を重ねてみようと思った理由とは。
その想いから滲み出る、魚への愛とあくなき探究心。目を輝かせながら語る長嶋さんは、まるで“永遠の少年”。
好きなモノ・コトへの「感動の鮮度を保つヒント」を教えてくれました。
(※)長嶋祐成さんの作品展『bloom(ブルーム)』は、2022年7月16日〜24日に開催。大盛況にて会期終了いたしました。
魚との出会いには、必ず背景がある
魚譜画家・長嶋祐成さん
MONOCO代表・柿山(以下、柿山):うわぁ、カラフルですね!ワクワクするなぁ。
長嶋祐成さん(以下、長嶋 敬称略):今回の展示では、主に色みの鮮やかな魚をピックアップして描きました。実際に石垣島の水辺で見ると、これが違和感ないんですよ。
編集部・井上(以下、編集井上):それぞれの魚たちに背景があるのも新鮮ですね!はじめての試みですか?
長嶋:今までは魚だけを描いてきたんですけど、魚との出会いには必ず“背景”があるんですよね。だから自分の魚の絵を見返すと、その時の風景や感情が自動的に浮かぶ。
礁池内の砂地に生える海藻「ウスユキウチワ」(左)、マングローブ林床の水たまりにいるナミハゼ(右)※撮影/長嶋祐成さん
でもよく考えてみたら、絵を見ている人にはその景色って伝わっていないんですよね。当たり前なんですけど(笑) 本当は後ろの景色までを含めた体験そのものを絵にしたいんだと最近気づきました。
取締役・鈴木(以下、鈴木):もっと立体的に動かすために、ストーリーが必要だったってこと?
長嶋:う〜ん、そうですね。自分の頭の中にある映像をそのまま絵で表したいと思ったら、背景が必要だったんです。
見たままの景色をそのまま描くというより、目についた要素をひとつ配置して、そこから景色を立ち上げられるように描きました。
たとえば、このアマミイシモチ。マングローブの影や根の間に潜んでいる魚なんですけど、水辺の根や頭上から垂れて影を落とす枝葉なんかを寄せ集めて描いているんです。
写真は「アマミイシモチ」の原画
井上:へぇ〜、おもしろい!ということは、ここに描かれた背景は長嶋さんの記憶の断片ってことですか。
長嶋:そうそう、僕の中では背景として描いているというより、思い出の断片を集めて配置しているっていう感じなんです。
たとえばこのアマミイシモチを見つけた時であれば、「あそこにいるんじゃないかと思って行ってみたら、本当にいてうれしかったなぁ」っていう気持ちとか、「やっぱり影になっているところにいるんだな」って思ったこととか。
アマミイシモチが暮らす小河川(上段・左)と身を潜めていた木陰(上段・右)、絵のモデルとなったアマミイシモチ(下段)※撮影/長嶋祐成さん
日がちょっとだけ傾いた夕方頃で、でも日差しが強いままアマミイシモチに光が差し込んで、「すごくきれいだったなぁ」っていう情景なんかを思い浮かべて。
井上:身を屈めてアマミイシモチに見入っている長嶋さんの姿が目に浮かびます(笑)
釣って食べることは、めったにないです
鈴木:じつは僕、長嶋さんの絵はもちろん好きなんですけど、文章はもっと好きです。
長嶋:絵を褒められるより嬉しいです! (笑)
鈴木:長嶋さんが書いた『THE FISH~魚と出会う図鑑』(河出書房新社)は、好きすぎて3回以上は読みました(笑)
魚のイラストを添えてサインを描いてくれる長嶋さんにファンの行列が。MONOCOも便乗しちゃいました。
本の中で、「魚を釣ってもリリースする」というようなことが書かれていましたが、釣った魚は食べないんですか?
長嶋:釣って食べるってことは、めったにないですね。
柿山:え、そうなんだ!
鈴木:それは締めたり、血抜きしたりっていう処理が面倒ってこと?
長嶋:そうですね。魚を殺す時、ちょっとしたストレスですしね(笑)
柿山:なるほど(笑)
写真左から、MONOCO取締役・鈴木、長嶋祐成さん、MONOCO代表・柿山
長嶋:あとは、持ち帰るための道具がいるじゃないですか。
僕は気が済むまで釣りしたり、網ですくったりしたいので、クーラーボックスを持ち歩くと動きが制限されちゃうんですよね。
長嶋さんが釣りをするサンゴ礁の礁池(しょうち)、潮が引いた後にタイドプールになるそう ※撮影/長嶋祐成さん
井上:「釣り」の醍醐味というか、一番夢中になるのは釣り上げて出会った瞬間なんですか?
長嶋:そうですねぇ……釣りって「答えあわせ」のようなところがあるんですよね。
僕が今やっている釣りは、小魚を釣る用のちっちゃい針を持ち歩きながら、石の隙間をチョコチョコと狙っている感じなんですけど。
「絶対あそこにいる!」と思って行って、予想通りの時もあれば、予想を裏切られることもある。その繰り返しの中で海歩きしていると、いろんなものが見られるし、体験の総体が自分にとってすごく楽しいんです。
柿山:「海歩き」っていいですね!なんか長嶋さん自身が海の中にいるような感じで(笑)アンテナを張りめぐらせながら海流に乗って、「お!あっちの方に魚がいるぞ」って泳いでいくみたいな。
長嶋:同じ種類の魚でも個体ごとに違うので、「1種類の魚をたくさん釣って(網ですくって)、観察して、すべての記録を必ず残してからリリースする」を繰り返しているんです。
で、その中から描くモデルを見つけるという感じで。
タイドプールにいた「ルリスズメダイ」と「キンセンイシモチ」の幼魚たち ※撮影/長嶋祐成さん
柿山:食べるための「釣り」じゃなくて、ディテールを感じ取るために釣るという感じなんですね。
ところで、僕は食べる方の魚が大好きなんですが、長嶋さんは食べる魚は何が好きですか?
長嶋:ありきたりですが……マグロです。以前までマグロはお茶濁しているものだと思っていたんですけど(笑)、石垣島に来てはじめてマグロのうまさを知りました。
本マグロ(クロマグロ)の漁期は、だいたい4月下旬〜5月いっぱいくらい。普段は高値がつくから那覇や東京の方に行っちゃうんですが、ここ2年ほどはコロナの影響で飛行機が減便になって送れないこともあって、島内にいい魚が出回っていたんです。
これがもう……めちゃくちゃうまい!
井上:うまいマグロって何が違うんですか?
長嶋:質感がきめ細かいんですよ。なんていうか……僕は水羊羹が好きなんだけど、水羊羹を食べているような感覚です。固形だけど、口の中でさらっと溶けてなくなるというか。「こしあん」の感じ(笑)
柿山:たとえ話がうまい!
「uonofu」ハンカチの次回作は……
鈴木:本当は今日、長嶋さんの絵を買いたかったんですけど……もう完売なんですね!
長嶋:そうですね。作品展の初日に並ばれた方達に番号付きの付箋をお配りして、欲しい作品に貼ってもらって完売という感じでした。
柿山:もう争奪戦!って感じだったろうね(笑)
長嶋さん、「uonofu」ハンカチの新作は考えてらっしゃるんですか?
長嶋:まだ、メーカーの『H TOKYO』さんと何にするかは決定してはいないんですが、僕の中でやりたいイメージはもう固まってきています。
できれば次回の作品展までに作れたらいいんですけどね。なんせ僕は展示の前日ギリギリまで絵を描いているような感じなんで(笑)どうでしょう。
柿山:うわぁ、MONOCOとしてもめちゃめちゃ楽しみです!
感動の“鮮度”を保つヒント/インタビューを終えて
幼少期より魚に魅せられ魚を描きはじめ、デザイン会社で働く傍ら魚譜の画家としても活動し、ついには石垣島へ移住して画家業に専念したという長嶋祐成さん。
何年も、何十年も、毎日のように魚を間近で見て描いていても、魚への「探究心の鮮度」って変わらないものなんだろうか……。
はじめて長嶋さんに取材をした際、私はそんな疑問を投げかけました。
その時の長嶋さんの回答が、なんとも印象的でした。
マングローブ林床の水たまりにいるナミハゼ ※撮影/長嶋祐成さん
「同じ種類の魚ばっかり見ていると、飽きるは飽きますよ(笑)
でも、着眼点を変えれば、魚の見え方も違ってきます。
たとえば、魚を見る方法や条件。大きい釣り針を使えば大きい魚が釣れますし、小さい釣り針を使えば小さい魚が釣れる。
釣って見るのか、潜って見るのか。朝なのか、夜なのか。満潮か、干潮かによっても、まったく違うものが見られるんです。
そうやって出会い方や自分の立ち位置を変えながら、“鮮度”を保つようにしています。」
“少年のような瞳”で魚を愛し、探求し、長嶋さんの「魚ワールド」をつくり続けられているのは、感動の“鮮度”を保つものの見方や向き合い方によって支えられていたのです。
じつは長嶋さん、京都大学の総合人間学部出身。現代思想の議論が盛んだった大学時代に「当たり前と思ったことを崩し続ける」ということを学んだのだとか。
見る人が変われば、別の見方がある。自分が考えている“当たり前”を疑い、ひっくり返し、目線を変えて組み立て直し続けるということ。
それが、好きなモノ・コトへの「感動の鮮度を保つ」ヒントなのかもしれません。
それにしても長嶋祐成さんの生活は、マインドフルネスそのもの。
平日の昼間にもかかわらず、絶え間なく来場者が訪れ賑わっていた長嶋さんの作品展「ブルーム」。楽しい時間をありがとうございました!
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