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MONOCO JOURNAL

スキャンダルをつくろう

イラストレーションを通して宇野亜喜良が伝えたい事

今では当たり前になった「イラストレーター」という職業。実は、戦後まで職業として確立していなかった。そのイラストレーションの先駆者が宇野亜喜良氏(82)である。誰しもが一度は見たことのある宇野氏のイラストは、その時代時代を捉え、人の心を掴んできた。

MONOCO でもお馴染みのスカーフブランド「yaezawa」と共同で制作したオリジナルストール第一弾『書物の少女』の販売が決定。今回は貴重なインタビューの機会を得られたので、他ではあまり見せない宇野亜喜良氏の素顔をご紹介したい。




若者のエネルギーを、言葉ではなくビジュアルで伝えてきた

イラストレーションという分野が確立してきたのも戦後間もなくのこと。宇野氏が横尾忠則氏や和田誠氏らと共に1965年「東京イラストレーターズ・クラブ」を設立。東京オリンピックが終わり、若者が次の何かを欲していたのかもしれない。みゆき族が生まれたり、ヒッピーファッションが広まったり、若者の主張が市民権を得た時代。

当時、イラストレーションそのものが“ファッション”となった。イラストレーターがなりたい職業NO.1 と言われるまでに、若者が夢中になった。

「例えば、横尾忠則が代表的なんですけどね。横尾忠則をカバー(表紙)に持ってくると、その企業の思想がエッジーというような感覚があった。」

宇野氏もイラストレーションで時代時代を表現してきた一人。若者の感覚を、言葉ではなくビジュアルで伝えてきた。



「イラストレーションでなにか語れるエネルギーがあった。イラストレーションの前はデザイン。もっと読みやすい文字や良いフォントで伝えるみたいな、理性の時代だったのが、イラストレーションにウェイトを置く情念的な伝え方、そういうことになった。」

「イラストレーションが市民権を確立したのではなく、当時の若者達をイラストレーションで表現していたら、その若者達が市民権を得た」と語る宇野氏は、実に謙虚なお人柄。ファンになってしまった。


最近描きたい「現象」はあるか?

宇野氏は、自身の目に映る「社会現象」を描いてきた。エネルギーのある現象だ。当時の若者のファッションもその一部である。
では、いま描きたい現象はあるのであろうか。

「例えば、みゆき族。親にも頼んでも買えない、どこにも売っていないファッション。独特のエネルギーがあった。

求めているのは普遍的なロマンティズムっていうのかな。いまの女の子たちを描きたいかというと、なるべく逃げたいっていうか、なるべく曖昧な女の子を描きたいかな。例えば、絵の中でなるべくインパクトを強くしていきたいときに、いまボブみたいなものが流行っているとすると、絵の中ではちっちゃくなっちゃうわけですよね。頭はなるべく派手に大きく描きたい。あんまり今を描こうという意識はないですね。

宇野氏のイラストにはよく少女が出てくる。改めて、イラストの少女たちをよく見てみると笑っていないことに気づく。よく会話の中で「普遍的な少女」というキーワードが出てきたが、なにを主張しているのだろうか。

「ぼくが本の中で引用しているんだけど、「私はおまえたちのほうが好きだ。滅んだ心よ、昔の心よ。」っていうフランスの詩人が書いた言葉があるんですよね。
どこか懐かしくって、でも普遍性がある、いつの時代もあるなつかしさ。滅びちゃった昔の心が好きよ、っていうこと。どこかで普遍性をもつというか。
それがいつの時代っていうんじゃなくって、人間の中にあるなつかしさを掻き立てる感覚。普遍的な心。

ぼくがスケッチブックをもって、渋谷あたりの若者たちを描くっていう現代じゃなくって、女の子たちの気持ちの中にあるこういう抽象的なものを描きたいね。

時代を定点観測してきた宇野氏の言葉で衝撃が走った。本当に大切なことは、私たちがいまをどう生きるか。



「体験的にいろんな時代からいいものだけを吸って、いい蒸留酒だけを作るみたいな風に思われると、ちょっとそんな芸当はぼくにはなくって…むしろやっぱり消えていくもの。過去形になってもいいから、鮮烈にその時代を生きた奴が面白いと思う。」


宇野亜喜良が“いま”伝えたいこと

宇野氏のイラストレーションの少し先には目で見えない価値が存在していると感じた。どこか普遍的でこれからも大切にしたい“なにか”。その“なにか”とは、人それぞれ感じるものが違うと思うが、その深さに納得した。



「イラストレーションの本番の前にラフを最初に描くんだけど、途中でもうちょっと面白くしたいなって思うんです。もう一つの変容が自分自身の中にあるんじゃないか。自分自身に対する冒険心みたいなもの。

いつも設計図を書いて、設計図でコンセプトをまとめているんだけど、そのまま設計図にはならない。そのまま本番にならない。ひょっとしてラフの方がいい場合もあるんじゃないかなぁ。それは、もう一つの自分が誕生する感じです。」

人生は一度きりなので、自分の人生を楽しむためにはそのライフスタイルを自分自身で設計しないといけない。そして、そのためには日々、新しい価値観や考え方に触れて、自分で決める必要がある。「働く人のライフスタイルを美しく」をコンセプトに掲げるMONOCOとしては、非常に共感した言葉だった。



「モノを選ぶときは「スキャンダルをつくろう!」っていう思想。突然「ストールを使ってみよう」っていうのがあるといいなぁ。

なにも装飾性のないTシャツに着けてみる。あるいはゴテゴテしたものに足して、さらにゴテゴテしてみる。動物の表情を生かしたいとき。従来通りのスカーフの使い方ではなくて、自分自身が興奮できる使い方ができるといいですね。

いろんなファッションを突然思いついてくれるといいですね。

 Editor's Note

柿山 丈博
作品は一度は見たことがあるという方も多いはず。
ぼくもその一人で、実際にどのような人物が描いているのか、恥ずかしながら知らなかった。

率直に言います。
ぼくは宇野亜喜良さんのファンになってしまいました。

予習して臨んだインタビュー当日。予習すればするほど、ものすごい世界観に圧倒され、ちゃんとお話がお伺いできるか、そもそもこれからする質問は失礼にあたらないか、かなりお堅い方なのでは?などと、妄想が妄想を呼び、かなりの緊張と不安。

麻布十番の宇野氏のスタジオに辿り着き、手に汗握りながらご挨拶。

宇野氏:こんにちわぁ、一度、お会いしたことありますよねぇ?

笑みを浮かべた宇野氏から出たその言葉に、思わず「え?」と言ってしまいそうになった。
お会いするのは初めてでしたが、宇野氏の優しい“勘違い”に一気に緊張が解けた。

回を重ねてお会いするごとに、宇野氏の人間的な魅力と深みに「もっと知りたい」という好奇心が湧いて出てきた。

今回のインタビューは、3回ほど取材を重ねて、編集した記事。
心が動かされる言葉がいくつもあったが、その中でも宇野氏らしい「スキャンダルをつくろう」を主題に持ってきた。

3部構成となる本企画だが、すでに第二弾の発表が待ち通して仕方がない。

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